2025.02.04
キヤノン株式会社(以下、キヤノン)と特定非営利活動法人 京都文化協会(以下、京都文化協会)は、「綴プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第16期作品として制作した、米国・スミソニアン国立アジア美術館所蔵「四季花木草花下絵山水図押絵貼屏風」(狩野元信 筆)の高精細複製品を、独立行政法人国立文化財機構・九州国立博物館(福岡県太宰府市)へ寄贈いたしました。寄贈作品は、2025年3月16日(日)まで館内で展示されます。
「四季花木草花下絵山水図押絵貼屏風」は、室町時代後期に流行した華美な屏風に掛け軸を掛ける風習を再現したとされ、絹本には中国風の水墨山水、金地には鮮やかな和風の花が描かれています。作者の狩野元信は、狩野派初代・正信の子として、狩野派の礎となる漢画(中国風の水墨画)に土佐派が得意とした大和絵の画法を取り入れるという、いわゆる「和漢融合」という様式を確立し、狩野派400年の繁栄を決定づけた絵師です。
原本を所蔵する米国・スミソニアン国立アジア美術館の所蔵作品は、設立者の遺言により門外不出とされているため、現地を訪問しない限り、鑑賞することができません。このたび、高精細複製品を制作することで、日本絵画の名品とされる本作品の日本への里帰りが実現しました。和漢融合の本作品は、「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」というコンセプトを掲げ、2025年に開館20周年を迎える九州国立博物館へ寄贈いたしました。
制作にあたっては、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」でオリジナルの文化財を撮影し、独自開発のカラーマッチングシステムを用いた画像処理を行った上で、12色の顔料インクを搭載した大判インクジェットプリンターで出力。さらに、京都の伝統工芸士が金箔などを用いた装飾を施し、屏風に仕立てることで、オリジナルの文化財を限りなく忠実に再現いたしました。
寄贈作品は、2025年3月16日(日)まで、九州国立博物館の文化交流展示室(平常展)で公開されます。この展示では、狩野派の巨匠・狩野永徳が描いた屏風絵などに加えて、蒔絵硯箱をはじめとする美しい漆工品も紹介され、中国の文化を受容して成立・展開した日本美術の優品を鑑賞することができます。また、寄贈作品は、写真撮影に加え、ガラスケースに遮られることなく間近で鑑賞できるなど、高精細複製品ならではの楽しみ方が可能です。
「綴プロジェクト」は、キヤノンと特定非営利活動法人 京都文化協会が 2007 年より共同で推進している文化支援活動です。日本古来の貴重な文化財には、歴史の中で海外に渡った作品や国宝として大切に保管されている作品など、鑑賞の機会が限られているものが多くあります。「綴プロジェクト」では、キヤノンの入力、画像処理、出力に至るイメージング技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、オリジナルの文化財を忠実に再現した高精細複製品を制作しています。制作した高精細複製品は、文化財にゆかりのある社寺や自治体、博物館などへ寄贈し、寄贈先での一般公開や学校教育の現場など、さまざまな場面で活用されています。これまでに、葛飾北斎や俵屋宗達、尾形光琳の作品など、60作品を超える高精細複製品を制作しました。
2025.02.04
2025年5月から「文化財ソムリエ(※)」として、ボランティア活動をしていただける大学生・院生を募集します。
※文化財ソムリエ (正式名称:京都国立博物館 文化財に親しむ授業講師)京都国立博物館およびNPO法人京都文化協会は、京都市教育委員会の協力のもと、京都市内の小中学校を対象とした訪問授業を行っています。授業では、最新のデジタル技術と伝統工芸の技を合せて作られた、高精細複製が教室に登場します。対話をしながら間近で鑑賞することで、子ども達が文化財に親しみ、興味・関心を持つきっかけとなることを目指しています。この授業の講師を務めるのが、「文化財ソムリエ」です。
この度、16期生の募集を行います。2025年5月よりスクーリングを開始、秋以降に授業の講師を担当していただきます。教材となる文化財や授業内容についてのスクーリングは、京都国立博物館の研究員が行います。なお、実際に訪問授業を担当して頂いた方には、心ばかりの研究支援費をご用意しております。
以下の条件にすべて当てはまり、本事業の趣旨に賛同し活動していただける方。
・2025年4月1日の時点で大学に在籍する学部生、または大学院生であること
・大学で日本文化、美術、歴史などを専攻していること
・月2~3回程度(水曜日 13:00~15:00)のスクーリングに参加できること