2025.06.25
キヤノン株式会社(以下、キヤノン)と特定非営利活動法人 京都文化協会(以下、京都文化協会)は、「綴プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第17期作品として制作した、クリーブランド美術館蔵「桐竹鳳凰孔雀図屏風」(伝 土佐光吉筆)の高精細複製品を、大阪府和泉市へ寄贈しました。
寄贈作品は、2025年6月26日(木)~ 2026年3月22日(日)まで和泉市久保惣(くぼそう)記念美術館で公開されます。
「桐竹鳳凰孔雀図屏風」は、桃山時代(16世紀)に描かれたもので、桐と竹を背景に、鳳凰と孔雀の雄雌が並び、その細緻に彩色された美しい羽が金地の空間によく映えた絢爛豪華な風格を放つ作品です。右隻には中央に鳳凰を配し、その足元にはスミレやツクシといった春の草花が描かれています。対する左隻は、孔雀の周りにリンドウやホオズキが添えられ、深まりゆく秋を示しています。作者には、大和絵土佐派の絵師・土佐光吉の名が挙げられており、繊細な色遣いで、細部まで丁寧に描かれた作画の姿勢は、細画を得意とした光吉ならではの作と考えられています。
狩野派の要素があり大和絵と唐絵の融合が見られる本作は、日本美術史を語る上で価値ある作品として知られ、原本は米国のクリーブランド美術館にて所蔵されています。光吉は、当時の宮廷に仕える絵師を統括する絵所預(えどころあずかり)の所領があった和泉国(現在の大阪府南西部)に拠点を構え、商人や文化人などの町衆との繋がりがあったとされており、このたび、高精細複製品を制作することで、絵師ゆかりの地・大阪府和泉市への里帰りが実現しました。
制作にあたっては、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」でオリジナルの文化財を撮影し、独自開発のカラーマッチングシステムを用いた画像処理を行った上で、12色の顔料インクを搭載した大判インクジェットプリンターで出力しています。さらに、京都の伝統工芸士が金箔などを用いた装飾を施し、屏風に仕立てることで、オリジナルの文化財を限りなく忠実に再現しています。
寄贈作品は、2025年6月26日(木)から2026年3月22日(日)まで、多くの東洋古美術の名品や国宝、重要文化財を所蔵し、地域の文化発信拠点として親しまれる和泉市久保惣記念美術館の本館ラウンジで公開※されます。この展示では、写真撮影が可能であるほか、鳳凰・孔雀の羽に見られる金など、作品の細部に至る色調や装飾までを忠実に再現した実物大ならではの迫力や美しさを、ガラスケース無しで間近で鑑賞できます。また、本作品は、その後も同館内で常設展示されるとともに、地域縁の絵師の作品として、和泉市主催の文化行事や地域連携によるイベントでの活用などが予定されています。
和泉市久保惣記念美術館
※入場には別途入館料が必要です。開館時間や展示場所の詳細については、和泉市久保惣記念美術館のホームページをご覧ください。
「綴プロジェクト」は、キヤノンと京都文化協会が2007年より共同で推進している文化支援活動です。日本古来の貴重な文化財には、歴史の中で海外に渡った作品や国宝として大切に保管されている作品など、鑑賞の機会が限られているものが多くあります。「綴プロジェクト」では、キヤノンの入力、画像処理、出力に至るイメージング技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、オリジナルの文化財を忠実に再現した高精細複製品を制作しています。制作した高精細複製品は、文化財にゆかりのある社寺や自治体、博物館などへ寄贈し、寄贈先での一般公開や学校教育の現場など、さまざまな場面で活用されています。これまでに、葛飾北斎や俵屋宗達、尾形光琳の作品など、60作品を超える高精細複製品を制作しました。
2025.03.07
日本に渡来したヨーロッパ人との交易の様子を描いた「南蛮屏風」は、16世紀後半から17世紀初期にかけて数多く制作され、国内外で100点以上の作品が現存すると言われています。その中でも、本作品は、登場人物が300人以上に上り、人物描写が多彩であることに加えて、南蛮船周辺のダイナミックな荒波の動きなど、華麗で装飾的な表現が見られることが特徴です。桃山時代(17世紀初期)に描かれたもので、左隻に入港する南蛮船や交易品、右隻に上陸した南蛮人の行列、それを興味津々に出迎える日本人の男女という構図がとられています。
また、本作品は、江戸時代後期から台頭した長崎を代表する商家の6代目当主で、実業家・文化人であった永見徳太郎の旧蔵品であり、同氏が南蛮屏風研究に突き進む原動力となった作品として広く知られています。永見徳太郎のコレクションの中でも、特に重要な作品として長く愛蔵された本作品は、その後、流転の運命をたどりましたが、現在は海を渡り、米国のクリーブランド美術館に所蔵されています。このたび、高精細複製品を制作することで、永見の故郷であり、南蛮貿易の中心地であった長崎への里帰りが実現しました。
制作にあたっては、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」でオリジナルの文化財を撮影し、独自開発のカラーマッチングシステムを用いた画像処理を行った上で、12色の顔料インクを搭載した大判インクジェットプリンターで出力しています。さらに、京都の伝統工芸士が金箔などを用いた装飾を施し、屏風に仕立てることで、オリジナルの文化財を限りなく忠実に再現しています。
寄贈作品は、2025年3月8日(土)から3月16日(日)まで、江戸時代から近代にかけての海外交流に関する資料や、南蛮芸術の収集と研究につとめた永見徳太郎ゆかりの作品を多く扱う長崎歴史文化博物館のエントランスホールに展示※されます。この展示では、写真撮影やガラスケース無しで間近での鑑賞を楽しむことができます。また、本作品は、その後も同館内常設展の海外交流史を紹介するゾーンで展示※されるほか、県内各地での特別展示や、地域連携による体験プログラムをはじめとした教育分野などでの活用が予定されています。
長崎歴史文化博物館ホームページ
※エントランスホールへの入場は無料です。常設展は別途観覧料が必要です。開館時間や展示場所の詳細については、長崎歴史文化博物館のホームページをご覧ください。
「綴プロジェクト」は、キヤノンと特定非営利活動法人 京都文化協会が 2007 年より共同で推進している文化支援活動です。日本古来の貴重な文化財には、歴史の中で海外に渡った作品や国宝として大切に保管されている作品など、鑑賞の機会が限られているものが多くあります。「綴プロジェクト」では、キヤノンの入力、画像処理、出力に至るイメージング技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、オリジナルの文化財を忠実に再現した高精細複製品を制作しています。制作した高精細複製品は、文化財にゆかりのある社寺や自治体、博物館などへ寄贈し、寄贈先での一般公開や学校教育の現場など、さまざまな場面で活用されています。これまでに、葛飾北斎や俵屋宗達、尾形光琳の作品など、60作品を超える高精細複製品を制作しました。
2025.02.04
キヤノン株式会社(以下、キヤノン)と特定非営利活動法人 京都文化協会(以下、京都文化協会)は、「綴プロジェクト」(正式名称:文化財未来継承プロジェクト)の第16期作品として制作した、米国・スミソニアン国立アジア美術館所蔵「四季花木草花下絵山水図押絵貼屏風」(狩野元信 筆)の高精細複製品を、独立行政法人国立文化財機構・九州国立博物館(福岡県太宰府市)へ寄贈いたしました。寄贈作品は、2025年3月16日(日)まで館内で展示されます。
「四季花木草花下絵山水図押絵貼屏風」は、室町時代後期に流行した華美な屏風に掛け軸を掛ける風習を再現したとされ、絹本には中国風の水墨山水、金地には鮮やかな和風の花が描かれています。作者の狩野元信は、狩野派初代・正信の子として、狩野派の礎となる漢画(中国風の水墨画)に土佐派が得意とした大和絵の画法を取り入れるという、いわゆる「和漢融合」という様式を確立し、狩野派400年の繁栄を決定づけた絵師です。
原本を所蔵する米国・スミソニアン国立アジア美術館の所蔵作品は、設立者の遺言により門外不出とされているため、現地を訪問しない限り、鑑賞することができません。このたび、高精細複製品を制作することで、日本絵画の名品とされる本作品の日本への里帰りが実現しました。和漢融合の本作品は、「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」というコンセプトを掲げ、2025年に開館20周年を迎える九州国立博物館へ寄贈いたしました。
制作にあたっては、キヤノンのフルサイズミラーレスカメラ「EOS R5」でオリジナルの文化財を撮影し、独自開発のカラーマッチングシステムを用いた画像処理を行った上で、12色の顔料インクを搭載した大判インクジェットプリンターで出力。さらに、京都の伝統工芸士が金箔などを用いた装飾を施し、屏風に仕立てることで、オリジナルの文化財を限りなく忠実に再現いたしました。
寄贈作品は、2025年3月16日(日)まで、九州国立博物館の文化交流展示室(平常展)で公開されます。この展示では、狩野派の巨匠・狩野永徳が描いた屏風絵などに加えて、蒔絵硯箱をはじめとする美しい漆工品も紹介され、中国の文化を受容して成立・展開した日本美術の優品を鑑賞することができます。また、寄贈作品は、写真撮影に加え、ガラスケースに遮られることなく間近で鑑賞できるなど、高精細複製品ならではの楽しみ方が可能です。
「綴プロジェクト」は、キヤノンと特定非営利活動法人 京都文化協会が 2007 年より共同で推進している文化支援活動です。日本古来の貴重な文化財には、歴史の中で海外に渡った作品や国宝として大切に保管されている作品など、鑑賞の機会が限られているものが多くあります。「綴プロジェクト」では、キヤノンの入力、画像処理、出力に至るイメージング技術と、京都伝統工芸の匠(たくみ)の技との融合により、オリジナルの文化財を忠実に再現した高精細複製品を制作しています。制作した高精細複製品は、文化財にゆかりのある社寺や自治体、博物館などへ寄贈し、寄贈先での一般公開や学校教育の現場など、さまざまな場面で活用されています。これまでに、葛飾北斎や俵屋宗達、尾形光琳の作品など、60作品を超える高精細複製品を制作しました。
2025.02.04
2025年5月から「文化財ソムリエ(※)」として、ボランティア活動をしていただける大学生・院生を募集します。
※文化財ソムリエ (正式名称:京都国立博物館 文化財に親しむ授業講師)京都国立博物館およびNPO法人京都文化協会は、京都市教育委員会の協力のもと、京都市内の小中学校を対象とした訪問授業を行っています。授業では、最新のデジタル技術と伝統工芸の技を合せて作られた、高精細複製が教室に登場します。対話をしながら間近で鑑賞することで、子ども達が文化財に親しみ、興味・関心を持つきっかけとなることを目指しています。この授業の講師を務めるのが、「文化財ソムリエ」です。
この度、16期生の募集を行います。2025年5月よりスクーリングを開始、秋以降に授業の講師を担当していただきます。教材となる文化財や授業内容についてのスクーリングは、京都国立博物館の研究員が行います。なお、実際に訪問授業を担当して頂いた方には、心ばかりの研究支援費をご用意しております。
以下の条件にすべて当てはまり、本事業の趣旨に賛同し活動していただける方。
・2025年4月1日の時点で大学に在籍する学部生、または大学院生であること
・大学で日本文化、美術、歴史などを専攻していること
・月2~3回程度(水曜日 13:00~15:00)のスクーリングに参加できること